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企画展「御田舞と獅子舞-衣装着人形でみる鳥栖の民俗芸能-」
開催期間
平成28年10月15日~平成29年6月20日
はじめに
鳥栖市内では現在、春や秋に御田舞や浮立、獅子舞などの民俗芸能が8地区7件で行われています。
これらは地域の人々の努力により古くから継承され、祭礼等に際して奉納・公開されてきたものです。
これらの中には、戦時中に中止を余儀なくされて以降、長く中断していたものが、地域の人々の熱意によって復活したものもあります。
今回の展示では「四阿屋神社の御田舞」と鳥栖地域の獅子舞を、伝統工芸の衣装着人形でご紹介します。
これらは日本芸術人形協会鳥栖支部の方々によって製作されたもので、伝統芸能の形態が衣装や道具類も含めて忠実に再現されています。
先人たちがその土地の自然や風土の中で育み継承してきた、民俗芸能をはじめとする個性豊かな伝統文化を「地域の誇り」としてご理解いただければ幸いです。
四阿屋神社(あずまやじんじゃ)の御田舞(おんだまい)
豊作を祈る御田植祭の一種で、田植えの一連の作業を芸能化したものです。
かつては五穀豊穣を願う予祝行事として旧養父郡惣社の四阿屋神社の4月1日の神幸祭に奉納されていましたが、現在は秋の行事となり、例年10月20日前後の日曜日に蔵上町の老松神社境内で行われています。
佐賀県重要無形民俗文化財に指定されています(昭和34年指定)。
御田舞は神社境内の地面に設置された三間四方の舞台の上で、長(おさ)・座奉行・申立(いいたて)・種蒔・代踏(しろふみ)・田童(とうど)・田打・鬼・鼓・太鼓・先払い・手すきなど総勢30人以上の青少年が、「申立」「田打」「種蒔」「代踏」「鬼」「雨降り」の順序で演じます。
木鍬を持った田打の所作、代掻棒を持った代踏の優雅な舞、早乙女姿の田童のあどけないしぐさ、鬼の勇壮な舞など、古式ゆかしい田植えの舞として貴重なものといえます。
今回の展示では、衣装着人形と実際の祭事での姿の両方をご紹介します。
長(おさ)・座奉行(ざぶぎょう)・申立(いいたて)
〈(左)長と座奉行、(右)申立〉
〈長と座奉行、紋付を着て背を向けているのは申立〉
種蒔(たねまき)
代踏(しろふみ)
田童(とうど)・田打(たうち)
〈(左後)田童、(右前)田打〉
〈(左)田童、(右)田打〉
鬼
鼓(つづみ)、太鼓
〈(左)鼓役、(右)裃(かみしも)をつけて叩く太鼓役〉
鳥栖地域の獅子舞
奈良・平安時代に寺院の法会に登場していた伎楽の獅子が、後に各地の祭事でも演じられるようになり、そこから広がった獅子舞が、その土地の民俗と融合して各地で独自に展開しました。
全国的に見ると獅子舞は数ある民俗芸能の中でも最も多く伝承しています。
鳥栖地域には現在、曽根崎町・藤木町・神辺町・牛原町及び村田町の5地区で獅子舞が伝承されています。
いずれも正確な起源はわかりませんが、江戸時代後期には始められているようです。
これらの獅子舞は、細部に違いがあるものの、基本的には雄獅子・雌獅子の二頭立てをそれぞれ前獅子役と後獅子役の2人が一体となって演舞する芸態や、特徴的な獅子つりの少年の装束や言立ての内容などに共通するものがあります。
獅子舞は雄獅子・雌獅子・つり合い獅子の構成と順序で、鉦と太鼓の伴奏で獅子つりにつられるようにして演舞されます。