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ドイツ・フッペル社製の古いピアノを、佐賀県鳥栖市の文化施設「サンメッセ鳥栖」に展示しています。
ピアノを製造したフッペル社は、1875年にロバート・フッペル氏が、現在のドイツ・ツァイツ市に工場を設立したことに始まります。その後、フッペル社は1903年にグランドピアノの製造を開始し、最盛期には100人以上の従業員が働き、年間1000台を生産するまでに成長しました。
サンメッセ鳥栖(JR鳥栖駅東)に展示されているフッペルのグランドピアノ
鳥栖市にこのフッペル社製のピアノが来たのは1931年のことです。地元婦人会の寄付によりグランドピアノを購入することとなり、当時の学校教諭陶山聰氏の選定により福岡市の楽器店を通じて購入、鳥栖小学校へ寄贈されました。
そして、第二次世界大戦の終結間近の1945年(昭和20年)夏、二人の日本兵が鳥栖小学校を訪れ、同校にあったこのピアノで「月光」を奏でました。二人は特攻隊員で、この世の名残りに弾いたと、教員だった上野歌子さん(故人)が戦後ながくたって明かしました。この物語は1993年「月光の夏」として映画化され、公開から1年を待たずに観客動員数100万人を突破しました。1948年進駐ソ連軍によってフッペル社の工場は閉鎖されましたが、寄贈から90年経った今でもフッペル社が作ったピアノは鳥栖で多くの人に愛され続けています。
フッペル鳥栖ピアノコンクールは、フッペルのピアノにまつわる悲話に込められた平和への願いを子供たちに伝え、音楽による平和文化創造を願って実施するものです。