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県指定重要文化財(美術工芸品・工芸) 黒麻地二十五条袈裟を紹介します
県指定 重要文化財(美術工芸品)
黒麻地二十五条袈裟(くろあさじにじゅうごじょうけさ)
黒麻地二十五条袈裟
- 【所在地】 鳥栖市河内町(萬歳寺)
- 【指定日】 平成4年5月27日
墨染、麻製の二十五条よりなる割載衣(かっせえ:反物を長短の布片に裁ち切って縫い合わせて製作した袈裟)です。墨染の質素な袈裟ですが、黄色の絹糸による縫目がアクセントとなって黒地に映えています。縫い方は黄色の絹糸で各段隔ごとに墨染したL字型の裂の縦葉と横葉を続けて返し縫いしており、表の糸目は点線、真の糸目は鎖縫い風となっています。裏側には着用時に紐を結ぶ環佩(かんはい)の座が残っていますが、ここに以亨得謙禅師(いこうとくけんぜんじ)の号である「悚牧(らいぼく)」の縫い取りがあることから、禅師自身が着用したものであろうと考えられています。
中世の日本ではみられない刺繍(ししゅう)の技法がもちいられており、禅師が中国から持ち帰ったものと思われます。現在まで大切に伝えられてきていることから、帰国時に師の見心来復(けんしんらいふく)より頂相と共に贈られた伝法衣(でんぽうえ:仏法を伝授した証として師が弟子に授ける法衣)の可能性も考えられます。
製作時期がほぼ特定できる中世の染色資料としても貴重なものです。萬歳寺にはこの他にも室町~江戸時代の法衣類が4領伝えられています。