鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが 安心して 共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例(通称:共に学び成長する子ども条例)を制定しました
保育及び教育において、差別の解消や合理的配慮を提供するための基本理念並びに市及び市民の役割を明らかにすること等により、障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して、共に学び、共に成長することができる鳥栖市の実現に寄与することを目的とする条例を制定いたしました。
条例の概要
本条例制定に至る背景
- 佐賀県では、「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例」が制定されたが、本市において、近年課題である、特別支援学級数の増加への対応、相談支援体制の充実、障害に関する理解促進等、配慮が必要な子どもたちの保育及び教育環境について言及がない。
- 過去の定例会でも、全ての会派の議員から、配慮が必要な子どもたちに関する保育及び教育環境の改善を求める質問・意見が出ている。
- 適切な支援環境を整えることで今まで特別支援学校しか選択肢がなかった子どもに「地域の学校」で学び、成長するという選択肢を増やす。
本条例の基本的な考え方
- 全ての子どもには、自己選択と自己決定の権利があり、必要な支援を受けながら、共に学び、共に成長することができる権利がある。
- 「障害の社会モデル」障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である。
そのためには鳥栖市として(市の役割)
- 保育及び教育環境において、ひとり一人の障害のある子どもに対して必要な配慮を行なう。(合理的配慮の提供)
- 保健・福祉・教育・医療機関の連携による相談支援体制の充実を図る。
そのためには市民として(市民の役割)
- 障害に関する理解を深めるとともに、障害がある子どもの差別の解消に向けた取組に協力するよう努める。
制定後の具体的な市の動き(要望)
- 福祉分野と教育分野が一体となった総合的な相談及び支援体制を充実するための組織機構の改革等
- 本条例が掲げる施策を具体的に推進するための基本計画(実施計画)の策定
制定後の目指す姿
- 障害に対する理解促進と障害を理由とする差別の解消に向けた取り組みが行われ、保育・教育環境の整備が進み、全ての子どもが、自分の人生を自分らしく生きることができる共生社会が実現されることを目指す。
- 関連する計画等(基本理念)
- 鳥栖市障害者福祉計画(~繋がり、支え合い、切り開く~認め合い、支え合いながら、自分らしく生きる力を発揮できるまちを目指して)
- 鳥栖市教育大綱(羽ばたけ!ふるさと鳥栖の未来を拓くひとづくり)
- 鳥栖市子ども・子育て支援事業計画(子育てを支えあい、子どもたちが健やかに成長し、よろこび・温かみ・安心感のあるまち)
条例の全文
全ての子どもは、障害のあるなしにかかわらず、共に学び、共に成長することができる平等の権利を有している。
障害者の権利に関する条約第24条では、「障害者が障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと」、「自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること」及び「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること」等を確保することとされている。
また、厚生労働省障害児支援の在り方に関する検討会の「今後の障害児支援の在り方について(報告書) 平成26年7月16日」では、障害のある子どもの地域社会への参加、包容を推進するために、保育所や放課後児童クラブ等の一般的な子育て支援施策における障害児の受入れを進めることにあわせて、教育とも連携をさらに深めた上で、より総合的な形での支援を実践していくことが重要であると示された。
さらに、医療的ケア児等の重度障害のある者に対する社会的障壁は大きく、家族支援も含めて、その対応は全国的にも課題となっており、国も「医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について」(平成28年6月3日関係府省部局長連名通知)を地方公共団体等に通知し、医療的ケア児とその家族を地域で支えられるようにするため、連携体制の構築を推進するように助言している。
これらの課題を解決するためには、障害のある子どもの成長に応じた切れ目ない一貫した支援を確保するとともに、保健、医療、福祉、教育等の関係機関の連携を図っていくことが重要になってくる。
ここに、鳥栖市における障害のある子どもに対する合理的配慮の提供等に関する理念が市民一人ひとりに根付き、障害に対する理解促進や障害を理由とする差別解消に向けた取組が行われることで、自らの意思により自分の人生を選択し、自分らしく生きることができる共生社会が実現されることを目指して、この条例を制定する。
解説
障害のある子どもが障害のない子どもと共に学び、共に成長し合うことを基本として、障害のある子どもが保育及び教育を受けることができる環境整備を推進するために、鳥栖市議会においても研究会で議論を重ね、条例を提案いたしました。
障害者の権利に関する条約では、障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという、いわゆる「障害の社会モデル」の考え方が随所に反映されており、第24条教育では、障害のある児童がその潜在能力を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できるようにするという教育理念のもと、障害のある児童と障害のない児童とが可能な限り一緒に教育を受けられるよう配慮することと考えられています。
これらのことから、2016年4月の障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の施行を受け、障害を理由とする差別が法的に禁止された他、就学先決定に際しては本人・保護者の意見を最大限尊重すること、また公立の学校では障害のある子どもたちが、障害のない子どもたちと同じような活動をできるようにするための「合理的配慮(物理的・心理的な「社会的障壁」を除去する配慮)」の提供が義務化されましたが、「合理的配慮」には、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という条件が付いており、障害のある子ども及び保護者と行政や学校関係者の間で、認識の違いや課題があるのも事実です。
また、国は、医療的ケアが必要な障害児への支援の充実を打ち出していますが、現状においては対応が厳しく、看護師の配置、現場教員等の医療的ケアの研修など、予算措置や現場での対応も含めて、大幅に改善が必要です。
そして、「家族支援」については、「子どもの養育の責任者である親を支援する」というよりは、「子どもの生活の為に犠牲になる親を支える支援」という意味合いとして、重篤な子どものいる家族の過度な負担を軽減する視点が重要です。
更に、幼保~小学校、小学校~中学校の移行期にかけての移行支援の充実が求められており、部・課を越えた、また保健、医療、福祉、教育等の関係機関との連携を行うことで、子どもにとって充実した支援が図られる必要があります。
本条例制定により、今後、障害に対する理解促進と障害を理由とする差別の解消に向けた取り組みが行われ、保育・教育環境の整備が進み、障害のある子どもが、自らの意思により通う学校を選択し、自分の人生を自分らしく生きることができる共生社会が実現されることを目指しています。
目的
第1条 この条例は、保育及び教育において、差別の解消や合理的配慮を提供するための基本理念並びに市及び市民の役割を明らかにすること等により、障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して、共に学び、共に成長することができる鳥栖市の実現に寄与することを目的とする。
解説
- この条例を定める目的についての条文です。
- この条文では、保育及び教育環境における差別の解消や合理的配慮を提供するための基本となる理念並びに市及び市民の役割、市が取り組むべき施策の基本となる事項について定めています。
- 適切な教育、支援環境を整える(社会的障壁の除去を行う)ことで今まで特別支援学校しか選択肢がなかった子どもに地域の学校で学び、成長するという選択肢を増やすことを提唱しています。
定義
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
- 子ども 中学校卒業までの者をいう。
- 障害のある子ども 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、難病に起因する障害等の心身の機能の障害(以下、「障害」という。)があり、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある子どもをいう。
- 差別 障害を理由とした不利益な取扱いをいう。
- 合理的配慮 障害のある子どもが他の子どもと平等に全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
解説
- この条例における用語の意味を明らかにしている条文です。
- 第1号では、「子ども」について明らかにしています。子どもには、様々な定義がありますが、市内の保育園、幼稚園、認定こども園、小学校、中学校等の保育及び教育環境整備に関する条例でありますので「中学校卒業までの者」と規定しています。
- 第2号では「障害のある子ども」について明らかにしています。障害者基本法及び障害者差別解消法第2条において「障害者」として定義されている条項を引用し、「難病に起因する障害等」を追記しています。
- 第3号では、障害を理由とした不利益な取扱いを「差別」と規定しています。
- 第4号では「合理的配慮」について明らかにしています。障害者の権利に関する条約第2条に定義されている条項を引用しています。
基本理念
第3条 全ての子どもは、障害のあるなしにかかわらず、自らの意思により自分の人生を選択し、自分らしく生きる権利を有するとともに、必要な支援を受けながら、共に学び、共に成長することができる権利を有する。
解説
- 本条例の基本理念を明らかにしている条文です。
- 全ての子どもには、自己選択と自己決定の権利があることを表しています。また、共生社会の実現に向けた「共に学び、共に成長する」を基本とするインクルーシブ(包括的な)保育・教育の理念を表しています。
市の役割
第4条 市は、前条の基本理念に基づき、次に掲げる取組を行うものとする。
- 市民の理解を深めるための、障害に対する理解の促進及び障害を理由とする差別の解消に向けた取組
- 障害のある子ども及び保護者の意向を尊重するための必要な支援並びに保健、医療、福祉及び教育の関係機関の連携を図る取組
- 保育及び教育環境における合理的配慮を提供するための、基礎的環境整備の取組
解説
- 市の役割について以下の内容を明らかにしています。
- 第1号では、市の役割として、障害に対する市民の理解を深めることに取り組む。
- 第2号では、市の役割として、障害のある子どもと保護者の意向を尊重するための必要な支援や、保健・福祉・教育・医療機関の連携を図ることに取り組む。
- 第3号では、市の役割として、市内の保育園、幼稚園、認定こども園、小学校、中学校等において、障害のある子どもへの合理的配慮を提供するための、基礎的環境整備に取り組む。
市民の役割
第5条 全ての市民は、障害に関する理解を深めるとともに、障害がある子どもの差別の解消に向けた前条の取組に協力するよう努めるものとする。
解説
- 市民の役割について明らかにしています。
- この条文では、全ての市民は、
- 障害に関する理解を深めることに努めること
- 障害がある子どもの差別の解消に向けた市の取組に協力するように努めることとしています。
施策の推進等
第6条 市は、第4条の市の役割を果たすため、次に掲げる施策を推進するものとする。
- 障害に関する広報や意識の啓発及び理解の促進を行うこと。
- 子どもの進学等に応じ継続した切れ目ない支援を行うこと。
- 地域自立支援協議会等の関係機関との連携を通じて、差別の解消に取り組むこと。
- 前項に掲げるもののほか、市は、次に掲げる事項の推進に努めるものとする。
- 福祉及び教育の連携等による相談支援体制の充実に関すること。
- 保育及び教育における職員の確保、適切な教材等の提供、施設の整備等に関すること。
- 保育及び教育に従事する職員に対する障害児保育や特別支援教育にかかわる専門性の向上に関すること。
- 障害のある子どもの家族に対する生活上の過度な負担の軽減に関すること。
- 障害のある子どもに対する医療的ケア及び必要な人員の配置に関すること。
解説
- 施策の推進について明らかにしています。
- 第1項では、(1)市民、市職員及び教職員を対象とした障害に関する広報、意識の啓発、理解促進、(2)就学時、進級時の移行支援、(3)民間と連携した差別解消など、基本的には予算を伴わない、部・課の横断、または民間との連携等による施策の推進を義務規定としてまとめています。
- 第2項では、(1)相談支援窓口の一本化等も含め、福祉分野と教育分野が一体となった総合支援やわかりやすい相談支援体制、(2)職員確保・教材提供・施設整備、(3)障害児保育や特別支援教育に関わる専門知識の向上、(4)家族への支援、(5)医療的ケアと人員配置など、組織改革や予算を伴う施策等の推進を努力義務規定としてまとめています。なお、医療的ケアとは、一般的に在宅等で日常的に行われている、たんの吸引・経管栄養・気管切開部の衛生管理等の医行為を指します。
配慮及び支援
第7条 障害のある子ども、その家族、支援者等は、保健、医療、福祉及び教育における配慮及び支援が必要なことを周りの市民に遠慮なく伝えることができる。
- 前項の配慮及び支援が必要であることを伝えられた市民は、それぞれの立場でできる配慮及び支援に努めるものとする。
解説
- 全ての市民が、障害のある子どもやその家族に対して、配慮や支援を行っていただきたい旨を表しました。
- 「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例」第7条(障害のある人からの意思の表明とその対応)より引用し、「保健、保育、教育及び医療における」を追記しています。
財政上の措置
第8条 市は、保育及び教育の環境整備を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
解説
- 財政措置について明らかにしています。
- 市は、本条例の目的を達成するため、保育及び教育環境の整備を推進できるよう必要な予算措置に努めることを表しています。
議会への報告
第9条 市は、毎年度、保育及び教育の環境整備に関する取組状況を議会に報告するものとする。
解説
- 市(市長及び教育委員会等の他の執行機関)が、保育及び教育環境の整備を推進するため取組の進捗状況を、毎年度議会へ報告することにより、透明性の高い市政を推進することとしています。
附則
この条例は、令和元年10月1日から施行する。
鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが 安心して 共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例(通称:共に学び成長する子ども条例)を制定しました
令和元年9月20日の本会議において、「鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例」が議長を除く全議員から提案され、全会一致で可決されました。
この条例は、保育及び教育において、差別の解消や合理的配慮を提供するための基本理念並びに市及び市民の役割を明らかにすること等により、障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して、共に学び、共に成長することができる鳥栖市の実現に寄与することを目的としています。
鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例(案)についてパブリック・コメント(意見公募)を実施しました 【終了しました】
案件名
鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例(案)
案件の概要
現在、市議会において、保育及び教育において、差別の解消や合理的配慮を提供するための基本理念並びに市及び市民の役割を明らかにすること等により、障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して、共に学び、共に成長することができる鳥栖市の実現に寄与することを目的とする条例の制定を目指しております。
つきましては、市民の皆様のご意見をこの案に反映させていただくため、ご意見を募集いたします。
鳥栖市障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもが安心して共に学び、共に成長するための、保育及び教育の環境整備を推進する条例(案)【逐条解説】[PDFファイル/271KB]
ご意見の募集期間
令和元年7月16日(火曜日)~8月16日(金曜日)【終了しました】
提出意見の状況
意見の募集は終了しました。
今回提出された意見は0件でした。
担当課
議会事務局(電話番号 0942-85-3525)